「新しい耳」テッセラ音楽祭の記録❹

イラスト・柳生弦一郎

 

テッセラ音楽祭にシリーズでご出演下さった音楽家、まずはなんと言っても高橋悠治さんでしょう。

演奏不可能といわれたクセナキスの超絶作品を弾きこなし、「ナポレオンのように不可能を知らぬ」とまで言われた天才音楽家、高橋悠治。メグリは桐朋の学生時代から、悠治氏のオッカケでありました。

初めて高橋悠治氏の演奏を聴いた時の衝撃は、五感全てに染み通り、そのまま細胞に入ってしまったので、細部に至るまで覚えているくらいです。

ん、とステージに現れた悠治氏、オジギはするようなしないような、ピアノの前に座り、猫のように前足、いや、手を、すん、と振り上げ、鍵盤で遊び出した、と思ったのは間違いで、ピアノを弾き出したのです。そうしたらピアノから出てきた音たちが、空中で、まるで天女かなにかのように踊り出すではありませんか。

「音が身振りを持つ」ということを初めて体感したわけです。

そんな高橋悠治さんが、なんと2008年の第3回目に出て下さることになったのです!

また、その第3回には以前のメルマガでも「海外からのゲストたち」でご紹介したシュテファン・フッソングも出てくれる、という素晴らしき異常事態になり、実行委員会はテンション爆上がりしたというわけです

猫のようにしなやかで、古代の賢者の如くに鋭い高橋悠治、でも音楽の根源を見つめるまなざしは限りなく暖かく、深く、広々としています。

2008年の第3回から2021年の第29回まで、実に14回にわたるシリーズ出演となりました。

 

常に「音楽とは、ほんとうは、こういうものだったんだ」と改めて感じさせてくれる演奏で、音楽と、静かに、時に激烈に、時には祈るように、対話していました。

 

高橋悠治さんの音、それを発する身体、脳、思考、哲学、全ては、聴き手の心の奥の奥に入り込んでいったことでしょう。

 

 

高橋悠治の動画

オリヴァー・ナッセン:「祈りの鐘の素描」

作品29

(第23回音楽祭)