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「新しい耳」テッセラ音楽祭の記録❷

「新しい耳」

テッセラ音楽祭の記録

海外からのゲストたち

その2

トーマス・ヘル

(pf)

前回のシュテファン・フッソングに続き、今回は日本でも大人気のピアニスト、トーマス・ヘルです!

 

ヘルさんは第7回(2010年)、第15回(2014年)に出演されました。

ピアノから鐘、オルガン、打楽器、歌、民族楽器、といったあらゆる音色を引き出すその演奏に聴衆は驚愕しながら共振し、床も壁も共振し、テッセラの会場自体が大きな鐘になったかのようでした。

そもそもの始まりは、作曲家の友人、原田敬子氏がドイツの音楽祭でとヘルさんの弾くリゲティ・エチュード全曲を聴いて廻にどんなに素晴らしかったかを熱く語り、まだヘルさんのCDが出る前の録音物でリゲティを聴き、すっかりブッ飛んだ廻が、東京にレクチャーで来日した時に会いに行ったのがヘルさんとの出会いでした。

ヘルさんの奥様は日本人で桐朋の後輩でもあったので、レクチャーの後に居酒屋さんでビールなど飲んで音楽祭の話で盛り上がり、話はどんどん面白い方向へ進んでいきました。

ヘルさんが「リゲティのエチュード全3巻にプラスして、2人で面白いこともやろうよ」と楽しそうに提案するので、2人の共通の知人であり友人である作曲家の原田敬子氏に連弾の新作を委嘱することになったのです。

そして生まれたのが

原田敬子:「一台のグランドピアノのための<4つの手>I-III」

 

いただいた楽譜には目玉や手のひらのマークやらアルファベットやらが満載!「???」と、それこそ目玉マークのような顔になっている私に、作曲者の原田敬子さんは「身体中からいろんなものがどんどん芽吹いてきちゃうような感じ。エッ!ここからも!ワッ!ここからも花が!葉っぱが!ってね。」などと楽しげに言い、その言葉にインスパイアされながら、さてヘルさんといよいよ合わせ!

2人で演奏してみると、これが本当に凄まじく、身体、脳、五感をフル活動させ、相手の「気配」を、それが気配になる前(!)に感じ取り、反応する。相手が音を出す前(!)にその音を聴き、光のスピードでこちらも音を放つ、という原田氏ならではの作品だったのです!

 

弾いていると作曲者の言うように身体から知らないものがどんどん芽吹いてくるので、2人とも細胞がどんどん分裂しながら演奏しました。

会場でのリハーサルの様子が動画に残っています。ぜひご覧ください。

原田敬子:「一台のグランドピアノのための<4つの手>I-III」

テッセラ音楽祭委嘱作品 2010

サロン・テッセラでのリハーサル風景 

台湾から東京に来た若い音大生がこの原田作品を弾くというので聴きに行ったら「わ!あのYouTube見て勉強しました!」と言ってくれて、テッセラ音楽祭からの広がりを実感して、とても嬉しかったです。

テッセラ音楽祭でのトーマス・ヘル初登場は大人気を博し、終演後には長蛇の列。皆さん「どうしても素晴らしかったと言いたい」という気持ちが溢れていて、ヘルさんは終始ニコニコしながら「ありがとうございます」と嬉しそうでした。

 

その列には作曲家の北爪道夫、権代敦彦 各氏も並んでいました。

音楽家同士の出会い、そこからまた音楽が生まれていきます。

第15回のテッセラ音楽祭では、ヘルさんは北爪道夫:「彩られた地形 第2番(1997)」を演奏し、また、2022年にはトッパン・ホールでのリサイタルで権代敦彦:「Diesen Kuß der ganzen Welt(2011)」を演奏しました。

 

トーマス・ヘルと廻は2013年にドイツのヴュルツブルグ音楽大学でコンサートやマスタークラスをします。そこはシュテファン・フッソングが教えている大学でもあったので、みんなでまたビールを飲んだり楽しい時を過ごしました。音楽祭が繋いでくれたミュージシャン・シップの楽しい思い出です。

ヴュルツブルグでのコンサートには、当時ドイツに留学していた大瀧拓哉さんが来てくれました。ヘルさんのお弟子さんだったのです!

その後、大瀧拓哉さんはオルレアン国際ピアノコンクールで優勝され、第32回テッセラ音楽祭(2023年)、「新しい耳」@B-tech Japan vol.5 (同年)に出演してくださいました。ジェフスキーの名演は記憶に新しいところです。さすがトーマス・ヘル先生のお弟子さん!

留学時代の大瀧拓哉さんを囲んで撮った貴重な一枚!。

トーマス・ヘルのリサイタルや室内楽コンサートはトッパン・ホールで何度か開催されています。いつも超満員でテンションの高い、トッパン企画ならではの素晴らしいコンサートとなっています。次の来日が待たれますね!