その「凛」とした佇まいや表情はあたりの空気を澄ませるが如きです。
寺嶋陸也さんはなんの衒いもなく、スッ、とピアノの前に座ります。そして、スラリと、まるで名人が刀を抜き出すように弾き出すのです。
その音楽は、時にキラリと鋭く光り、時にギラリと凄みを帯び、音楽の核心へとまっすぐに向かっていきます。
寺嶋さんの出す音は、常に、たとえそれがどんな強音であれ、深い沈黙の中から生まれ、沈黙へと還っていきます。それは、音、というものの根源を思い出させてくれるようです。そしてその沈黙がどれだけ美しく、あるいは哀しく、あるいは恐ろしく、全てを内包し、どんなに豊かなコミニュケーションとなりうるかも、同時に伝えてくれるのです。
寺嶋陸也さんは2015年の第16回音楽祭から、なんと2023年の第32回まで、毎年5月の音楽祭に、合わせて8回もご出演くださいました。間宮芳生作品、安達元彦作品を演奏した回では、各作曲家が客席で嬉しそうに、また、驚愕しながら聴き入っていらっしゃいました。
末吉保雄作品を弾いた回では、テッセラでの会場リハーサルに故・末吉先生がいらして、「いや〜、もう〜、こんなふうに弾いてくださって、作曲家としてこんなに嬉しいことはないです。」と感動していた姿がアリアリと思い出されます。
下の写真は、開演前にテラスで歓談される間宮芳生先生と寺嶋陸也さん。師と弟子でもあり、作曲家同士でもあり、この時は作曲者と演奏者である、という貴重な1枚です。
寺嶋陸也さんのコンサートは、いつも始まる前から会場が熱気に包まれていました。そして演奏が終わると「わ〜」だの「は〜」だの、さまざまな感嘆の声が客席からたくさん聞こえ、上気した表情のお客さまたちをお見送りする我々もまた、上気していました。
決してブレることのない音楽への姿勢、愛、そして優しさに溢れながらも、深いところでは常に自由のために闘っている寺嶋陸也さん。今年2024年の年間を通じて開催される「新しい耳」@B-tech Japan の「シェーンベルク・シリーズ」初日に登場いたします。
詳しくは「新しい耳」HPをご覧ください。
日時:2024年5月11日(土)15:30開演(15:00開場)
会場:B-tech Japan 東京スタジオ 〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-1-3 磯村ビル1F(地下鉄虎ノ門駅すぐ)